処分›景品表示法
「家族葬 10.45万円~」のテレビCMに措置命令 ― 実際は30万8000円以上が必要とされる
この記事のまとめ
- 消費者庁は2026年9月18日、株式会社金宝堂に、景品表示法7条1項にもとづく措置命令を出しました。
- 対象は、地上波放送のテレビコマーシャルで、2025年3月から5月までの間に放送された表示です。
- 表示からは、葬儀サービスの最低料金が10万4500円であるかのように読み取れるとされました。
- 実際には、僅かな場合を除き、30万8000円以上の費用が必要だったと認定されています。
- 命令は、一般消費者への周知徹底、再発防止策の従業員への周知徹底、同様の表示の禁止です。
違反の類型:有利誤認
消費者庁は2026年9月18日、株式会社金宝堂に措置命令を出しました。相手方は、東京都渋谷区道玄坂に本店を置く株式会社金宝堂(法人番号3040001071182)です。根拠は景品表示法7条1項です。対象となったのは、同社が「小さな森の家」と称する屋号で供給する葬儀サービスのテレビコマーシャルで、景品表示法5条2号(有利誤認)に該当するとされました。
「家族葬 10.45万円~」の文字が流れたテレビCMが対象とされた
対象となった役務は、「小さな森の家」と称する屋号で供給する、貸切ホールを用いる家族葬に係る葬儀サービスです。表示の場所は、地上波放送を通じて放送したテレビコマーシャルでした。
命令書は、家族葬という言葉について次のように記しています。
家族など近親者だけで行う葬儀を一般的に家族葬という。
命令書の別表に掲げられた表示期間は、令和7年(2025年)3月1日から3月24日まで、3月26日から4月18日まで、4月21日、5月1日から5月22日まで、5月26日、5月28日から5月31日までです。別表の「表示内容」欄には、花飾りを背景にした文字の映像と音声が6行にわたって並びます。
これらの表示について、命令書は次のように事実を認定しました。
金宝堂は、本件役務を一般消費者に提供するに当たり、地上波放送を通じて放送したテレビコマーシャルにおいて、例えば、令和7年3月1日から同月24日までの間、「1日1組 貸切ホール」との文字の映像、「選べるホールがこんなに」との音声と共に「えらべるホールがこんなに」との文字の映像、「お得なプランがこの価格から」との音声と共に「家族葬 10.45万円~ (税込)」との文字の映像等を表示するなど、別表「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示内容」欄記載のとおり表示することにより、あたかも、本件役務が、最低料金として10万4500円で提供されるかのように表示していた。
命令書が問題としたのは、個々の文字や音声ではなく、別表に並ぶ表示によって、最低料金として10万4500円で提供されるかのように表示していた点です。
実際には、僅かな場合を除き30万8000円以上の費用が必要だったとされた
命令書は、実際に必要だった費用について次のように認定しています。
実際には、本件役務の提供を受けるには、僅かな場合を除き、30万8000円以上の費用が必要であった。
適用された条文は、命令書の「法令の適用」に次のとおり書かれています。
前記事実によれば、金宝堂は、自己の供給する本件役務の取引に関し、本件役務の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をしていたものであり、この表示は、景品表示法第5条第2号に該当するものであって、かかる行為は、同条の規定に違反するものである。
公表資料に抜粋された景品表示法5条2号は、商品・役務の価格その他の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を対象としています。条文が置いているのは価格そのものの高低ではなく、表示された取引条件と実際との関係です。
周知徹底・再発防止・同種表示の禁止と、長官への報告が命じられた
発表資料は、命令の内容を次の3点にまとめています。
ア 前記⑵アの表示は、前記⑵イのとおりであって、本件役務の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。 イ 再発防止策を講じて、これを従業員に周知徹底すること。 ウ 今後、同様の表示を行わないこと。
命令書では、この内容が4つの項に分けて書かれています。周知徹底について、命令書は方法の承認まで定めています。
貴社は、貴社が一般消費者に提供する本件役務に係る表示に関して、次に掲げる事項を速やかに一般消費者に周知徹底しなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、消費者庁長官の承認を受けなければならない。
同種の役務についての表示も禁じられています。
貴社は、今後、本件役務又はこれと同種の役務の取引に関し、前記⑴アの表示と同様の表示を行うことにより、当該役務の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示をしてはならない。
さらに、行った周知徹底と、とった措置の報告も命じられています。
貴社は、前記⑴に基づいて行った周知徹底及び前記⑵に基づいてとった措置について、速やかに文書をもって消費者庁長官に報告しなければならない。
表示内容の決定を広告制作の委託先に委ねていた点も、決定への関与とされた
命令書の「事実」は、金宝堂と表示内容の関係について次のように認定しています。
金宝堂は、本件役務に係るテレビコマーシャルの表示内容の決定について広告制作等を行う事業者に委ねることにより、当該表示内容の決定に関与している。
テレビコマーシャルの制作を外部に委ねていた点は、表示内容の決定への関与として扱われました。命令の相手方は金宝堂1社です。
公表資料から、広告・表示の担当者が確かめられること
この命令で線が引かれたのは、表示から読み取れる最低料金と、実際に提供を受けるために必要な費用との開きです。公表資料は、前者を10万4500円、後者を僅かな場合を除き30万8000円以上としています。広告で示した金額で実際に提供できた件数の記録は、その開きを示す資料に当たります。
もう1つは、表示を誰が決めているかという線です。広告制作等を行う事業者に表示内容の決定を委ねていた点も、決定への関与とされました。委託先に表示の決定を任せているときは、任せた範囲を示せる書面があるかどうかが、確かめる対象に当たります。
なお、同じ形の価格表示がつねに同じ判断になるとは限りません。命令書は、表示から読み取れる取引条件と、実際に必要だった費用とを並べて見ています。個別の判断は、表示の全体と取引の実態によります。
公表されたPDFには、命令書に付く別添写しの添付を省略した旨が注記されています。命令書には不服申立ての教示も付いています。処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内の審査請求と、6か月以内の取消しの訴えが示されています。
経過
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- 消費者庁が株式会社金宝堂に措置命令(消表対第807号)を出し、同日、公表しました。
出典
- 株式会社金宝堂に対する景品表示法に基づく措置命令について(2026年10月12日取得)
- 株式会社金宝堂に対する景品表示法に基づく措置命令について(公表資料・PDF)(2026年10月12日取得)