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クーリング・オフを妨げるため「訪問販売には該当しない」 ― 訪問販売業者に9か月の業務停止命令

この記事のまとめ

  • 関東経済産業局は2026年9月17日、訪問販売業者1社に特定商取引法にもとづく業務停止命令を出しました。
  • 停止は2026年9月18日から2027年6月17日までの9か月間で、勧誘・申込受付・契約締結が対象です。
  • 認定された違反は、契約書面の記載不備、解除についての不実告知、返金債務の一部拒否、連行の4項目です。
  • 代表取締役の池本 明優にも同じ期間の業務禁止命令が、同社には再発防止策などの指示が出されました。
  • 指示には、過去の契約相手へ2026年10月19日までに通知し、同日までに報告することも含まれます。

違反の類型:不実告知・書面の不備・その他

関東経済産業局は2026年9月17日、訪問販売業者1社に対して業務停止命令と指示を出しました。消費者庁は翌9月18日にこれを公表しています。本処分は、特定商取引法69条3項にもとづき、消費者庁長官の権限委任を受けた関東経済産業局長が実施したものです。

対象は、株式会社HOPE Groupです。公表資料によると、本店所在地は東京都新宿区中落合3-29-10野澤ビル3F、代表取締役は池本 明優、設立は2023年5月8日、資本金は500万円です。提供役務は、水回りの給排水管工事に係る役務と、害虫駆除及び駆除後の予防措置に係る役務等と書かれています。公表資料には、類似する名称の別会社と間違えないよう会社所在地なども確認するよう注記があります。

別紙1は、この事業が訪問販売にあたる理由を次のように書いています。

株式会社HOPE Group(以下「HOPE Group」という。)は、営業所等以外の場所である消費者宅において、水回りの給排水管工事に係る役務(以下「本件役務①」という。)又は害虫駆除及び駆除後の予防措置に係る役務(以下「本件役務②」という。)を有償で提供する契約(以下「本件役務提供契約」という。)を締結し、本件役務①又は本件役務②を提供していることから、このようなHOPE Groupが行う本件役務①又は本件役務②の提供は、特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号。以下「特定商取引法」という。)第2条第1項に規定する訪問販売(以下「訪問販売」という。)に該当する。

営業所等以外の場所である消費者宅で契約を締結し、役務を提供していたことが、特定商取引法2条1項の訪問販売にあたる、という整理です。

9か月の業務停止と、代表取締役への業務禁止

業務停止命令の根拠は特定商取引法8条1項です。別紙1に、停止の期間と対象の業務が書かれています。

HOPE Groupは、令和8年9月18日から令和9年6月17日までの間、訪問販売に関する業務のうち、以下のアからウまでの事項を停止すること。 ア HOPE Groupが行う訪問販売に関する役務提供契約の締結について勧誘すること。 イ HOPE Groupが行う訪問販売に関する役務提供契約の申込みを受けること。 ウ HOPE Groupが行う訪問販売に関する役務提供契約を締結すること。

期間は2026年9月18日から2027年6月17日までの9か月間です。訪問販売に関する業務のうち、勧誘・申込受付・契約締結の3つが止まります。

あわせて、特定商取引法8条の2第1項にもとづく業務禁止命令が、代表取締役の池本 明優に出ました。期間は会社への業務停止と同じ2026年9月18日から2027年6月17日までです。命令は、上の3つの業務を新たに開始することと、その業務を担当する役員となることを禁じています。別紙2は、名宛人となった理由を次のように書いています。

池本は、HOPE Groupの代表取締役(特定商取引法第8条の2第1項に規定する役員)であり、かつ、HOPE Groupが停止を命ぜられた業務の遂行に主導的な役割を果たしていた。

認定された違反は、書面・不実告知・返金・連行の4項目

処分の根拠となる法令の条項として別紙1が挙げているのは、特定商取引法7条1項と8条1項です。違反する行為として挙げられているのは、次の4項目です。

  • 書面の交付義務に違反する行為(記載不備)/5条1項
  • 訪問販売に係る役務提供契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為/6条1項5号
  • 訪問販売に係る役務提供契約の解除によって生ずる債務の一部の履行を拒否する行為/7条1項1号
  • 訪問販売に係る役務提供契約に基づく債務を履行させるため意に反して貸金業者の営業所、銀行の支店その他これらに類する場所に連行する行為/7条1項5号にもとづく施行規則18条6号ロ

局はこれらをまとめて、次のように認定しています。

HOPE Groupは、以下のとおり、特定商取引法の規定に違反し、又は特定商取引法に規定する指示対象行為に該当する行為をしており、関東経済産業局は、訪問販売に係る取引の公正及び役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認定した。

4項目のうち3項目は、契約を結んだ後のクーリング・オフと返金の場面に関するものです。勧誘の入口ではなく、消費者が解除を申し出てからの対応に条文があてられています。

「訪問販売には該当しない」と告げてクーリング・オフを妨げた

特定商取引法6条1項5号は、解除に関する事項につき不実のことを告げる行為を禁じています。別紙1は、告げた内容をそのまま挙げています。

HOPE Groupは、令和7年7月、訪問販売に係る本件役務提供契約の解除を妨げるため、当該契約のクーリング・オフを申し出た消費者に対し、実際にはクーリング・オフができるにもかかわらず、「訪問販売には該当しない」などと、あたかも当該契約はクーリング・オフができないものであるかのように告げた。

時期は2025年7月です。別紙1は、本件役務②の提供が訪問販売に該当することから当該契約はクーリング・オフができる、と書いています。告げられた相手は、事例1では消費生活センターの相談員でした。

全額を返還する義務が生じた後に、減額だけを告げた

7条1項1号は、解除によって生ずる債務の一部の履行を拒否する行為を挙げています。別紙1は、2025年2月から同年7月までの間の行為として、次のように書いています。

HOPE Groupは、少なくとも令和7年2月から同年7月までの間、クーリング・オフにより訪問販売に係る本件役務提供契約について受領した金銭の全額を返還する義務が生じたにもかかわらず、「○円の返金は可能」(「〇円」は特定の金額を告げたもの。以下同じ。)、「既に工事は終わっているのでクーリング・オフは応じられないが、減額には応じる」などと告げ、当該債務の一部の履行を拒否する意思を表明し、受領した金銭の一部しか返還せず、本件役務提供契約の解除によって生ずる債務の一部の履行を拒否した。

工事が終わっているかどうかは、公表資料では返金の義務を左右する事情として書かれていません。認定されているのは、全額を返還する義務が生じた後に一部しか返還しなかったことです。

支払のためATMへ連行した

4項目めは、7条1項5号にもとづく施行規則18条6号ロに掲げる行為です。

HOPE Groupは、令和7年2月、訪問販売に係る本件役務提供契約に基づく債務を履行させるため、消費者の意に反し、金融機関のATMへ連行した。

事例2には、その場面の言葉が記録されています。

この際、作業員Xは、消費者Cが現金では支払えない旨申し出たにも関わらず、消費者Cに対して、支払の即時履行を求めるために、「今日、現金で預かっていきますよ」、「振込みだと大変だし、手数料もかかりますよね。私と一緒にATMまで行って、払ってもらった方が楽ですよね」などと言い、消費者Cの意に反し、消費者Cを金融機関のATMへ連行し、現金を出金させて、即時の支払をさせた。

手数料や手間を理由にした言い方も、意に反して連行した行為の経過として書き込まれています。

契約書面に名称と代表者の氏名がなかった

書面については、交付そのものはしていたと認定されています。

HOPE Groupは、少なくとも令和7年2月から同年6月の間、訪問販売に係る本件役務提供契約を締結したとき、本件役務①又は本件役務②の提供を受ける消費者に対し、本件役務提供契約の内容を明らかにする書面を交付しているが、当該書面に、HOPE Groupの名称及び代表者の氏名を記載していなかった。

欠けていたのは、自社の名称と代表者の氏名です。書面を渡したかどうかではなく、法定の記載事項がそろっていたかどうかが見られています。

安い料金のウェブ表示から訪問に至る流れが、事例に書かれている

別紙1の事例1と事例2は、消費者がHOPE Groupに訪問を依頼した経緯から書き起こされています。

令和7年6月、消費者Aは、HOPE Groupが管理していたウェブサイトの「関東エリア最安値に挑戦!550円(税込)~」との表示を見て、HOPE Groupに対して自宅への訪問を依頼した。

続きには、依頼の時点で金額を把握していなかったことが書かれています。

この際、消費者Aは、HOPE Groupに自宅への訪問を依頼したものの、HOPE Groupから本件役務②の具体的な内容や金額の説明を受けなかったことから、本件役務②の具体的な内容や金額を把握しておらず、高くても1万円程度で本件役務提供契約を締結する意思しか有していなかった。

事例2も同じ形で始まります。

親族Dは、消費者Cから想定する契約金額について何ら聞いていなかったが、HOPE Groupが管理していたウェブサイトの「詰まりトラブル 今すぐお電話を 980円~」との表示を見て、HOPE Groupに対して消費者C宅への訪問を依頼した。

事例1では、役務の対価が消費者Aの想定を10万円以上上回る金額の契約を締結したと書かれています。事例2では、消費者Cの想定よりも30万円以上上回る金額でした。

ただし、関東経済産業局が違反する行為として挙げた4項目に、このウェブサイトの表示は入っていません。公表資料は、表示の内容について条文をあてていません。表示は、消費者が訪問を依頼した経緯として事例に記録されています。

指示は、委託先の作業員への周知と、過去の契約相手への通知まで

指示の根拠は特定商取引法7条1項です。別紙1の指示アは、再発防止策の範囲を次のように書いています。

当該行為の発生原因について、調査分析の上検証し、法令遵守体制の整備その他の再発防止策(法令及び契約に基づく返金及び解約の問合せ等に適切かつ誠実に対応することを含む。)を講じ、これをHOPE Groupの役員、従業員及びHOPE Groupが勧誘行為の実施等を委託する作業員(再委託や再々委託等により委託先の者が更に勧誘行為の実施等を委託する者を含む。)に、前記(1)の業務停止命令に係る業務を再開するまでに周知徹底すること。

周知の対象は、役員と従業員だけではありません。勧誘行為の実施等を委託する作業員が含まれ、再委託や再々委託の先まで書かれています。再発防止策の中身にも、返金と解約の問合せへの対応が入っています。

指示イは、過去の契約相手への通知を求めています。

HOPE Groupは、訪問販売により、本件役務提供契約を締結しているところ、令和7年7月1日から令和8年9月17日までの間にHOPE Groupとの間で訪問販売により本件役務提供契約を締結した全ての相手方に対し、以下の(ア)から(ウ)までの事項を、関東経済産業局のウェブサイト(https://www.kanto.meti.go.jp/)に掲載される、HOPE Groupに対して前記(1)の業務停止命令及び本指示をした旨の公表資料を添付して、令和8年10月19日までに書面又は電磁的方法(以下「書面等」という。)により通知し、同日までにその通知結果について関東経済産業局長宛てに書面等(通知したことを証明するに足りる証票及び通知書面を添付すること。)により報告すること。

対象は、2025年7月1日から2026年9月17日までに訪問販売により契約した全ての相手方です。通知と報告の期限は、どちらも2026年10月19日です。通知する内容と同封書類については、2026年10月1日までにあらかじめ関東経済産業局長宛てに報告して承認を得ることも書かれています。

通知する事項は3つあり、その3つめは次のとおりです。

HOPE Groupが、公表資料のとおり、特定商取引法第6条第1項第5号に掲げる本件役務提供契約の申込みの撤回又は本件役務提供契約の解除(以下「クーリング・オフ」という。)に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたこと。

自社がした行為を、相手方に自分で知らせる形が主文に書き込まれています。

広告・表示の担当者が公表資料から読み取れる点

この処分で条文があてられたのは、広告の文言ではなく、契約書面の記載と、解除を申し出られてからの対応です。公表資料に書かれた範囲で整理すると、次の3点が読み取れます。

第一に、クーリング・オフの可否についての案内が、6条1項5号の対象になっています。「訪問販売には該当しない」という説明が、実際にはできる場合にされたことが認定の中身です。自社の取引が訪問販売にあたるかどうかの整理と、問合せへの回答が、どこまで記録に残っているかが問われます。

第二に、返金の場面では、減額の提案が履行の拒否として扱われました。全額を返還する義務が生じた場面で一部しか返還しなかったことが、7条1項1号に掲げる行為とされています。

第三に、ウェブの表示は違反する行為の4項目には入っていないものの、事例の起点として公表資料に書き残されています。「関東エリア最安値に挑戦!550円(税込)~」「詰まりトラブル 今すぐお電話を 980円~」といった表示と、実際の契約金額の差が、同じ文書の中に並べて記録されました。表示で示した価格と、現場で提示する金額の幅が、社内で説明できる形になっているかが、自社で確かめられる点です。

個別の事案で何が違反とされるかは、勧誘の全体と取引の実態によります。自社の手順について判断が必要なときは、所管の行政機関や弁護士に確認してください。

今後の予定

  1. 過去の契約の相手方への通知と、関東経済産業局長宛ての報告の期限(指示イ)
  2. 株式会社HOPE Groupへの業務停止命令と、代表取締役への業務禁止命令の期間が満了

日付は公表資料の記載にもとづくものです。

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経過

日付と出来事の一覧を開く(2件)
  1. 関東経済産業局が株式会社HOPE Groupに業務停止命令と指示、代表取締役に業務禁止命令を出す
  2. 消費者庁が処分を公表。業務停止・業務禁止の期間が始まる

出典

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